バクテリアセラピーとは、
スウェーデンのバイオガイア社を中心に
臨床実用化が進められている医療技術です。
「バクテリアセラピー」(学術名: Bacterio-therapy)とは、体内菌のバランスと整えることで病気の治療や予防を行うという医療技術です。スウェーデンのバイオガイア社によって臨床実用化が進められ、日本でも歯科分野を中心に善玉菌を利用して体内に常在する菌の質やバランスを改善することで、疾病の予防や治療に役立てることをめざして、研究と臨床への応用がすすめられています。
ヒトの体には約500種500兆個以上、重さに換算すると約2kg にもなる膨大な量と種類の菌が生息しています。この菌はヒトに有益な「善玉菌」、病気やトラブルの原因になる「悪玉菌」、優勢な菌に合わせてどちらにもなる「日和見菌」の3種類に分類されます。そして、体内菌のバランスが悪玉菌に優位な状態になってしまうと、様々な病気を引き起こすことがわかっています。
バクテリアセラピーは、善玉菌を補給することで体内菌のバランスを整える医療技術。日本の病院の標準的な治療の妨げにならないだけでなく、その治療を促進し、また病気の再発を防ぐといったメリットもあります。
ペニシリンの抽出で有名なハワード・フローリー博士が「バクテリアセラピー」を初めて提唱したのは1946年のこと。その後、ヒルマン博士らに「有害微生物によって乱された微生物叢を有益な菌株を摂取することで自然な状態に回復させ維持すること。」(1946, Florey, 1999, Hillman)として定義され、スウェーデンのバイオガイア社が特許を持つロイテリ菌によって実践的な医療技術として確立されました。
その方法はいたってシンプルで、善玉菌を投与することで、悪玉菌の割合を減らし、菌質を改善することで疾病の予防・治療役立てるというもの。しかし、一般的に善玉菌と呼ばれている乳酸菌のほとんどが、ヒトの体に必要な常在菌を抑えることもわかっています。バクテリアセラピーの実現において、悪い菌だけを抑制することができるロイテリ菌の存在は欠かすことのできない存在です。
風邪や歯周病の治療には悪玉菌を殺菌する目的で抗菌剤(抗生物質)が使用されます。しかし、抗菌剤は体内の善玉菌も殺菌してしまうため、多用すると様々な副作用が起こります。また、抗菌剤の濫用によって、抗菌剤の効かない「薬剤耐性菌」を産んでしまい、社会問題となっています。
ロイテリ菌を使ったバクテリアセラピーは風邪ですら大きなリスクとなるNICU(新生児集中治療室)などでも実施されている安心・安全な療法です。
抗菌剤を避けたい赤ちゃんや妊婦の方、抗菌剤の常用によって副作用に悩まされている高齢者の方には、日頃から疾病予防としてバクテリアセラピーを実施していただくことで抗菌剤の使用を抑え、また薬剤耐性菌を持った方の疾病治療の選択肢として推奨されています。
1928年に世界最初の抗生物質(抗菌剤)としてペニシリンが発見されて以降、数多くの抗菌剤が発見・開発され多用されるようになった現代では、薬剤に対して耐性を持った菌やウイルスの発生によって、病気の治療が困難になる事例も発生し、年々事態は深刻になっています。世界保健機関(WHO)では2011年に世界保健デーで薬剤耐性(AMR)問題を取り上げ、ワンヘルスアプローチに基づく世界的な取り組みを推進する必要性を訴えました。
抗菌剤を使用するような病気を予防する手段として、また薬剤耐性菌を保有してしまった人に対する治療の選択肢としても、バイオガイアの推進する「バクテリアセラピー」は注目されています。
口内フローラ整え、お口から全身の菌質を守り、SRP(歯周病の初期治療)などの治療効果を高めるバクテリアセラピーは、現在では多くの歯科で導入が進んでいます。
お口は空気や水分・食物とともに様々な「菌」の入り口となる重要な部位です。また、歯周病は心筋梗塞や脳梗塞、糖尿病のリスクを高める深刻な病気です。お口の衛生と健康を悪玉菌から守ることが、全身の健康を守ることに繋がります。