介護を担う方、受ける方の両方にとって
尊厳ある介護環境をつくるために
少しでも楽で合理的な介護を目指すことは、悪いことではありません。
介護を担う方・受ける方の双方にとって、肺炎・便秘・下痢といったトラブルは、単に肉体的な苦痛や危険を伴うだけでなく、人としてのプライドが傷ついたり、介護を担う方の負担が大きくなったりすることがあります。
介護医療と福祉の先進国であるスウェーデンでは、介護を受ける方・担う方双方の負担の軽減や生活の質の向上を大切なテーマとして捉え、早くから色々な取り組みが行われています。
そのカギは、日常的におこる要介護者の健康トラブルを事前に予防すること。 発生してから対処するのではなく、発生の予防が重要だと考えているのです。
日本では虫歯や歯周病、肺炎予防に毎日の口腔内のブラッシングと舌苔の除去が有効とされていますが、この点はスウェーデンも同じです。しかし、それでも細菌・悪玉菌の増殖を抑えるには十分ではありません。 それは高い再発率を示すデータが現状の難しさを物語っています。そこでスウェーデンでは薬剤治療等で減ってしまった善玉菌を新たに補給する事で、善玉菌を体内で悪玉菌と戦わせ、繁殖を抑えていく新しい方法が開発されました。これをバクテリアセラピー(菌質管理)と言います。
肺炎・下痢・便秘の3大トラブルについて
肺炎・下痢・便秘を引き起こす原因は様々ですが、近年の研究で高齢者の体内に増殖しやすい悪玉菌が大きく関係している事がわかってきました。 特に免疫力の低下した高齢者や寝たきりの方にはその傾向が強いと言われています。
高齢者の体内における悪玉菌の増殖について
人の体内にはもともと体に有益な働きをする善玉菌、有害な悪玉菌、普段はどちらでもないけれど体力や免疫力が低下すると有害になる場合がある日和見菌(ひよりみきん)の3種類の細菌類が住んでいます(約500種・500兆個、重さにして約1~2kg)。
近年の研究では、健康な人は善玉菌がしっかり働いて悪玉菌や日和見菌が暴れるのを抑えてくれますが、体力の低下した高齢者や長期にわたって抗生剤治療を受けている方は、薬剤の影響で善玉菌が減り、悪玉菌や日和見菌が暴れてしまいやすい状態になっている場合が多い事が分かってきています。